奈良県に古くからある伝統の郷土料理「柿の葉寿司」。
普通のお寿司とは違い、ひと口大に握った白米(現在は酢飯が主)に塩漬けされた鯖の切り身を乗せ、柿の葉で包んだ押し寿司です。
柿の葉寿司の由来ははっきりとはしないが、柿の産地だった五條や吉野川流域の家々で、少なくとも江戸時代中期ごろから親しまれてきたことが知られています。
海から遠く離れた山里にとって、川をさかのぼって運ばれてくる海産物や塩は大変な貴重品でした。
届いたサバは保存のための塩がまわりすぎていて、煮ても焼いてもしょっぱくて食べられなかったそう。
しかし、貴重なタンパク源を無駄にはできない、というわけで、塩サバを薄く切り、一口大のにぎり飯に添えて食べるようになりました。
やがて乾燥を防ぐために柿の葉で包み、重石で余分な空気を抜いて3日ほど寝かせて発酵を促すという方法が考え出されたのが「柿の葉寿司」です。
“発酵”と書いたように、当時の柿の葉寿司はごはんが糸をひいた状態で酸味を持つ馴れ(熟れ)ずしで、一晩寝かせるだけの現在の押しずしとは違ったわけで、その後約3日間は食べられるほど保存性に優れていたらしいです。
保存食としての利点だけでなく、塩でしめた鯖は何日もかけて運ばれる内に旨味が引き出され、香り豊かな柿の葉で包むことで魚の臭いもなくなり、味も格別となりました。
かつては夏祭や秋祭に欠かせないハレの日のご馳走だった柿の葉寿司。
今でも、奈良を代表する郷土料理のひとつとして、多くの専門店にその味が引き継がれています。
奈良へ旅行に出かける際には、ぜひ柿の葉寿司を味わってみたいものですね。
*敬称略
*写真と本文とは関係ありません
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