三重県「湯の山温泉」は、近鉄「湯の山温泉駅」よりバスで約8分の場所に位置する温泉地です。
ニホンカモシカの生息で知られる御在所岳のふもと、急峻な谷間にホテルや旅館が立ち並びます。
湯の山温泉の歴史は古く、養老年間(717~723)の温泉発見からつづく湯の山温泉は栄枯盛哀を繰り返してきました。
そんな湯の山温泉には「折鶴伝説」と呼ばれる逸話が残っています。
江戸時代、ひとり娘の葵と使用人の佐吉は、結ばれぬ恋を思いつめ湯の山に身を投げようとしたその時、ひとりの僧兵が現れ「温泉にでもつかれば、気持ちも変わるかも知れんぞ」と励ましたのです。
その言葉に気を取り直したふたりが湯に入ると、なぜか思い詰めていた気持ちが、ほんのりと解けていくのが分かりました。
あくる朝、僧兵に礼をと三岳寺を訪れたところ姿がみえません。
せめて感謝の気持ちを伝えようとふたりは鶴を折り、寺へ奉納しました。
すると折鶴は連なってひらひらと舞い上がり、飛びたっていきました。
この不思議な出来事に、明るい望みが生まれ、ふたりは上方に帰る決心をしたのです。
それから数年後、幸せになったふたりは三岳寺を訪ね、住職にあの僧兵のことを話すと、もう何十年も僧兵はいないとのこと。
ふたりを救った僧兵は仏様の仮のお姿だったのでしょうか。
今でも三岳寺では、永遠の愛と、幸せに結ばれることを願い、折鶴を奉納する恋人たちの姿が絶えません。
御在所岳山麓のハイキングコースでは、多彩な高山植物はもちろん特別天然記念物のニホンカモシカなどの野生動物にも出合えるそう。
シカが温泉で傷を癒したという言い伝えが残ることから「鹿の湯」の別名で古くから親しまれています。
悠久の歴史を刻む古湯に身をひたせば、伝説の中の男女のように気持ちが和らいでいくのを実感するかもしれませんね。
*敬称略
*写真と本文とは関係ありません
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